海老園の家

広島市南西部の瀬戸内海に程近い古くからの閑静な住宅地に建つ、夫婦二人+子供一人の三人家族の為の専用住宅である。敷地は、間口5m弱に対し奥行き20mと南北に細長く、前面道路からは最大2m程低く、東側隣地はこの敷地からさらに2m低いレベルにある。施主からは2台分の駐車スペース、LDK、寝室、将来的に2部屋に分割できる子供部屋のほか、風通しと明るさの確保を最重要項目として求められた。

前面の設備本管埋込み深さを考慮しつつ、東側隣家と各階がほぼ半階ずれる高さに敷地地盤面を決めた。建物の中央に、光や風の通り道としてパティオと名付けた玄関を兼ねる四畳半程の吹抜けを挿入し、その天井をガラス張りのトップライトとした。パティオは、1階では子供部屋と一つながりの空間としても利用でき、2階ではワーキングスペースとして個別利用も可能としている。また、リビング・ダイニングを緩やかにつないだり、仕切ったりできるよう配置されている。パティオは自然光を建物すべての空間に届けると共に、上下階の空間の親密さを強め、間仕切りの開閉により各空間を自由に拡張させる。2階南側には道路からの視線をさえぎりつつ、壁で囲まれた広いテラスを設け、テラスに向けた全開口とすることで、外に対して閉じながらも自然光と風を内部に採り込む。東面の開口部は隣地とのレベル差を利用し、隣地の植栽を借景としつつもお互いの視線が気にならないよう設けた。

季節や時間などの外部環境の変化に対し、刻々と空間を変化させ建物全体を活性化するパティオや、視界の抜けや互いが補いながら成立するという相互的な空間構成により、狭いながらも広がりと奥行きの感じられる、豊かな住環境をつくり出せたと思っている。